「裏」遠野物語①:「座敷童」〜童(わらし)の姿だけとは限らない⚠️〜

岩手県には誇るべき4人の文人がおります

石川啄木

野村胡堂

宮沢賢治

そして

佐々木喜善(1886〜1933)

です

佐々木喜善さんについては、実は現代ではあまり知られてはいないのですが

東京の民俗学者柳田國男に初めて「遠野物語」を伝えた張本人なんです

佐々木喜善さんがいなければ、河童も、まよひがも、座敷童も広く世間に知られることはなかったでしょう

真の意味での遠野物語の立役者、それが佐々木さんです

【さて…】

佐々木さんの伝えた話をもとに、柳田國男はメルヘンとして遠野物語という文献を完成させたのですが…

誤解を恐れずに言えばあくまでそれはメルヘンであり、佐々木さんが記録している、把握している遠野物語は違います

本物の…「裏遠野物語」と言いましょうか…はっきり申しますと

「笑い事じゃない」

ものです

はっきりと申しますと

「人間の心が作る不条理な感情と、この世のものではない、異界のものたちが呼応しあって出来上がった、畏怖すべき物語の数々」

これが真の遠野物語なのです

柳田國男さんは、佐々木さんの伝えた遠野物語から、今でいうエログロナンセンスな描写を消去し、万人向けの物語に改造した上で世に出したんですね

【座敷童】

今ではポピュラーになった遠野発祥の怪異、それが座敷童ですね

可愛らしい童(性別不詳)の姿をした「一種の神様」で

座敷童がその家に現れると、その家には幸せが訪れると言われています

そして、反対に座敷童が出ていくと、その家は衰退するとも言われています

↑これが柳田國男さんの世に出した遠野物語で表される座敷童です

佐々木喜善さんの伝える座敷童は違います、危険です

家屋の中に出現するのは共通していますが

襖の向こうから異様なほど長い「腕2本だけ」が伸びてきて「おいでおいで」をするようにみたものを招くような動作をするもの

唸り声と共に、色が黒く、何やら獣じみたものが現れ、座敷をぐるぐると徘徊する

他には

鉤爪のはえて歪んだ笑みを浮かべた老女

天井に届くかと言わんばかりの大入道

の姿の座敷童の目撃例もあるとのことです

童の姿で現れるケースは極めて稀だということです

これらの不気味な要素を、柳田國男さんは嫌って、自分が世に出す書の内容には記さなかったのでしょう

しかし、佐々木喜善さんの伝える「本来の遠野物語」の通りならば

座敷童は必ずしも、人間に幸福を与える存在とは限らず、人間に仇をなす存在、危険な存在である可能性も非常に高く考えられます

どこの地方でも共通していると思いますが

不思議な話や、ファンタジーチックな伝説、言い伝えなどには必ず「暗く恐ろしい部分」もその裏には隠されています

100%明るい要素だけを信じて受け入れるということの方が、ある意味危険なのかもしれません